世紀の美女、その危険な罠

世界三大美人といえば、カエサルなど数多の男を迷わせたエジプトの女王クレオパトラ、
玄宗との悲劇のラブロマンスで有名な中国唐の楊貴妃、その美しさゆえにトロイ戦争の元凶と
なったギリシャ神話の絶世の美女ヘレネ(彼女の代わりに小野小町を入れるのは日本だけで
ある)だが、中国にも三大美人と呼ばれる人達がいる。
もちろんこちらにも登場の楊貴妃(他にご存知項羽の愛人・虞美人との説もあり)、春秋時代越
の人で呉越を滅ぼした究極の傾国の美女・西施、そして3人(4人)中唯一実在しない人物(小
説の登場人物である)三国時代(厳密には後漢だが)の貂蝉である。貂蝉の貂蝉たる理由は
もちろん、かの有名な「連環の計」(私は赤壁の連環の計と紛らわしいので、「第一次連環の
計」と呼んでいる)。歌伎の貂蝉が未曾有の暴政をしく董卓をうまいこと他人を利用して殺させ
る話なのだが、このやり口がうまいというか汚いというか。

ある日、恩人である司徒の王允が世を憂えているのを見た貂蝉、恩人のためにわが身を犠牲
にすることを決意する。かくて、この二人が組んだとき、究極トラップ「連環の計」が発動したの
である!まず董卓を倒すには出来るだけ強い協力者が必要である。王允や貂蝉など董卓に
掛かれば一ひねりだからだ。そこで目をつけたのが、董卓の義子、呂布であった。呂布は九原
(現在の内蒙古!)の生まれで超人級の武勇の持ち主、しかし強さと忠義さは必ずしも比例しな
かった。なんといっても奴にはとんでもない前科があった。義父の丁原をその武勇を欲しがっ
た董卓からの贈り物に目が眩んで殺してしまったのである。この忠とか孝にうるさい時代によく
やったもんだとは思うが、そんなことは辺境生まれの彼にとっては関係のないことだったのかも
しれない。とりあえず、王允はこいつなら嵌められると思ったようだ。
まず王允邸に呂布を招き、貂蝉に相手をさせる。貂蝉の色香にかかれば呂布なんぞイチコ
ロ。まんまと引っかかりやがったのだった。数日後、今度は董卓を招き、またもや貂蝉が相手
をする。そして董卓がその美貌と歌舞に迷うと、二重テンプテーション成立である。
王允はすぐさま貂蝉を董卓に差し出した。穏やかでないのは呂布である。愛した人は義父親
の愛人・・・・きゃあっ(>_<)(馬鹿が)その間隙をついてさらに罠を仕掛ける。貂蝉はわざとその
柳眉をひそめ、たまにはさめざめと泣き、わが運命のつたなさを呂布に訴える。呂布に己を信
じさせる上、董卓の嫉妬と疑念をかきたてたのだ。呂布はいよいよ董卓が憎い。「あの樽から
あのかわいそうなお方を救って差し上げるのだ」位思っていたかも知れぬ。そして別働隊の王
允は密かに作った反董勢力に呂布を勧誘し、まんまと乗ってきた彼に董卓を殺させたのであ
る。「連環の計」はここに完成した。こうして、首謀者王允の手は何一つ汚れないまま中華最凶
の大魔王は道半ばにして倒れたのである。

しかし、もちろんこれは事実ではない。王允と呂布が組んで董卓を誅殺したことは事実だが、こ
れほどまでに大きな一連の暗殺劇に一介の女が介在する余地はない。
だが、ひとつの種としての女の存在もある。『魏書』呂布伝によれば、呂布は董卓の侍女に手
をつけ、それが発覚するのを恐れていたらしい(お前ってやつは)しかし、それまでである。あ
の侠気と剛烈さに富んだ女英雄・貂蝉とは比べようもない。

ともかく、連環の計は演義お得意のうきうき楽しくなる「おはなし」なのである。








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