「蜀相」

丞相祠堂何処尋        丞相の祠堂 何れの処にか尋ねん

錦官城外柏森森        錦官城外 柏(はく)森森 

映階碧草自春色        階に映ずるの碧草 自ずから春色

隔葉黄〔麗鳥〕空好音     葉を隔つるの黄〔麗鳥〕 空しく好音

三顧頻繁天下計        三顧頻繁なり 天下の計

両朝開済老臣心        両朝開済す 老臣の心

出師未捷身先死        出師未だ捷(か)たざるに 身 先ず死し

長使英雄涙満襟        長(とこしえ)に英雄をして 涙 襟に満たしむ


まず杜甫は文句が小難しいので、そこのあたりの解説から・・・・(笑)
黄〔麗鳥〕(こうり)はウグイスのこと。黄鳥ともいいます。
黄雀というと、スズメの一種。曹植の作品に「野田黄雀行」がありますね。
「両朝開済」は、劉備・禅の二代にわたって建国・創業のために力を尽くすこと。
「捷」はなかなか見ない字ですが、ここでの意味では「勝」と一緒。

杜甫が孔明を敬愛していたことは李白のところでも少しだけ触れましたが、この詩は実際に蜀
の「丞相の祠堂」を訪ねたときのことを情景に描いています。
今の成都の武侯祠とは違うものですが、雰囲気はなんとなく伝わってきませんか?
ところでなぜ杜甫が孔明を敬愛していたのか、なんですが、杜甫は晋の杜預(破竹の勢いの出
典の人で、「左伝集解」などを著す)を祖にもち、初唐の詩人・杜審言を祖父にもつ名家の出身
ながら、科挙についに合格することが出来ず、やっと小さな仕事についたところに安史の乱が
勃発して運悪くそれに捕まってしまうんですね。乱の終息後は各地を転々(成都にいたのもこ
のとき)それでもものすごく貧乏で、子供が餓死しちゃったりする。最期は長江を舟で下ってい
る時に家族に看取られながら死んじゃう。全く不運を絵に描いたような人生です。(死ぬ直前地
元の有力者からもらった肉が一週間くらいぶりの食事。ガツガツ食べちゃってそれが原因で頓
死、なんていう話も・・・・。学会では食あたりということで定説化しています・汗)話を中盤のほう
に戻して、かなり彼としては不本意な人生を送っているわけですよね。名家としての矜持もある
し。それで憧れたのが、あの貧相な草盧(笑)から己が才能一つで天まで駆け上がった蛟竜
(周瑜伝では劉備のことを言うが、私はこの人も充分そうだと思う)諸葛亮なんです。

だから今成都に観光っていうと、パンダ園と杜甫草堂と武侯祠が絶対3点セットになっている
のは、この人きっと嬉しいと思う(爆笑)

相変わらずご丁寧な七言律詩。さすがです。





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