PART3 姦雄伝説の進化論

さて、陳宮を供に引きつれさらに逃走を続ける曹操。
その足でまっすぐ知人の呂伯奢の家に向かいます。呂伯奢は喜んで接待をしますが、酒がき
れたためお店に買いに行きました。その後、曹操は呂伯奢の家の者たちのただならぬ会話や
刃物を研ぐ音を聞き、自分を殺そうとしていると思い込んで8人を皆殺しにしていまいます。
そして家から逃げる途中、買い物から帰ってくる道すがらの伯奢と出会い、後で通報されては
面倒と伯奢まで殺してしまいます。たまらず陳宮が非難すると、一世一代の名言を吐きます。
「我が天にそむくとも、天が我にそむくことは許さん」
陳宮、幻滅。到底こいつに信頼はおけないと、ついに見捨てて去ってしまいます。
それから曹操は郷里へたどり着き、雌伏のときを過ごすことになりました。
ひとまず第一次曹操編終了。めでたしめでたし。

それでは、まず陳宮うんぬんは抜いて考えてくださいね(え?という方で謎の恩人が未見な方
はまずこちらへ)。これは、曹操はこんなに悪いやつなんだぞ〜っという典型的なエピソードで
す。効果は絶大ですね。しかしこれらをいちいち真に受けていては、本当の三国志のおもしろ
さは分かりません。まず先入観から抜いていきましょう、本当に面白くなるのはそれからです。
これはもともと、武帝紀注に引く、王沈の『魏書』・郭頒の『世語』・孫盛の『雑記』の応用です。
これがなかなかおもしろいことになっているので、それぞれから引いてみましょう。

まず、『魏書』。董卓の暴政は失敗すると踏んだ曹操は、任官に応じず郷里に逃げ帰った。
数騎の供と旧知の呂伯奢の家を訪れると、伯奢は留守で、その子供たちは食客とグルになっ
て馬と金品を盗もうとした。なので曹操は自ら刀をとり、数人を撃ち殺した。
次に、『世語』。曹操は呂伯奢の家に立ち寄った。伯奢は留守で、5人の子供たちはきちんとも
てなしてくれたが、なんせ自分は董卓にそむいているので、彼らが自分を殺すつもりかと疑い
夜のうちに剣で8人を殺害し、去った。
最後に、『雑記』。曹操は伯奢の子供たちが用意する食器の音を聞いて自分を始末する気だと
思い込み、夜のうちに彼らを殺害した。そのあと後悔し、「我が人にそむくとも、人が我にそむく
ことなからしめん」と言い、出発した。

同じようなことを何回も、と思われるでしょうが、よく考えてみてください。最初は伯奢の息子た
ちが本気で曹操に危害を加えようとしています。れっきとした正当防衛です。次は自分が時の
権力者に逆らったため、もしかするとここで殺されるかもしれないと思っています。
そして最後、これは完全に勘違い。しかも捨て台詞まで吐いています。
ちなみにこれらは成立の時代順に並べてみました。もうお分かりですね?時代が進むにつれ、
曹操の方にどんどん分が悪い状況になっていっています。そして、最終進化形が、演義。前述
の3つでは留守で共通していた呂伯奢まで殺すことで、最悪の状況を描き出しているのです。
しかし、孫盛・・・・(呂珪が別件で孫盛に個人的な恨みをもっていることは内緒です/笑)

ここで、結論。曹操は伯奢の子弟たちを殺しはしたが、伯奢までは殺っていない。はず。





女の子お絵かき掲示板ナスカiPhone修理